おっきなもみの木には真っ赤な靴下をあげよう。わたしにはちょうちょの形したリボンタイを。君には深緑と赤の紙にくるまれたとびきりのプレゼントを。




ころびそうになるわたしを手を引っぱって、仕様がないなあってわらいながらしゃんと立たせてくれる。とび跳ねたいくらいにうれしいことがあると、あっという間に読みとってあたまをなでてくれる。そんな君には星屑でできた王冠、あげれたらいいのに。はしごを掛けて真っ暗な空に登るなんてこと できやしないからあげれない。君にぴったりお似合いの、王冠はどこにある?

「雪が降るとやっぱり寒いな」
「凍っちゃう」
「はは、そしたら手はつなげないな」
「えっ…凍んないようにする」

わらうマークの手に下げられた紙袋からは、クリスマス色の包装紙やらリボンやらが顔を出してる。いろんな子からマークへのプレゼント、女の子が8割。きっとみんないっぱい気もちを詰めこんでるんだろう。手づくりケーキはお料理の本をお菓子たべるのおなじくらい、熱心に読みこんで戦闘準備をばっちりして。雪にもとけない気もちを、こころにしまいこんで。
吐くと真っ白けになる息が空気にとける瞬間を見て、君にぴったりのプレゼントわかっちゃったりしないのかな。ななめ上の横顔は、男の子らしい考えごとだとか悩みごと いろんなことを見えないようにしてるのかも。ひとつでも見えてくれたら、それが真ん中に立ってプレゼントはこれがいいよって教えてくれるはず。マフラーに口までうずめて、脳みそまるごと使って考えた。…それでもわかんないことに音を上げて、ついにマークに聞いてみる。

「マーク、ほしいものある?」
「そうだな…あたらしいスパイクがほしい」
「なるほど…」

スパイクって、ちょっと高級なチョコレートケーキみたくお高い。わたしには手どころか指まで出せない値段。

「…なあ、」
「?」
「君にプレゼントがあるんだ」

きれいなマークの目が、真っ白な吐息の向こうで光を受けてきらめいた。ぜいたくな金糸でできたような髪の毛も、ちらりと乗った雪でまぶしい。ぴんとした鼻筋の先にある、お鼻のあたまは赤い。ほっぺたも蜂蜜色した髪からのぞく耳も、つめたい空気がピンクにしてた。チークでも乗っけてるみたい。君のその口元はぐるぐる巻きのマフラーで隠れてる、なにしたってかっこいいんだなあ。見惚れてるとマークは手に下げてた紙袋のうちのひとつを開く。それって、女の子からもらったものだと思ってた。そこから出てきた、

「わあ!」
「メリークリスマス」

マークは耳あてをそっとはめてくれた。ラビットファーがくすぐったい。目を細めて微笑むマークを見上げてたら、じんわりほっぺたが熱くなった。ぎゅっとほっぺた吊り上げて、「ありがとう!」わらうとマークもわらってくれた。けれどわたしは君にスパイクをあげることができないし、星屑でできた王冠だってあげられない。とびきりのプレゼントったらどこにいる?

「マーク、ごめんなさい」
「なにがだ?」
「なにをあげたらいいのかわかんなくって、まだ買えてない…」
「ああ、そんなことか」
「だからマークのほしいもの言って、ひとつ」

ななめ左上に目線を向けてすこしだけ考えたあと、マークは恥ずかしそうにわらった。

「とりあえず、君がいるからなにもいらない」

きゅん。歯が浮いちゃうようなせりふも、君が言えばわたしをぐらぐらにさせる呪文なのだ。スパイクあげられなくても、星屑の王冠わたせなくても お花でできた冠ならいくつでもつくれる。チョコレートがたっぷりのケーキだってつくれる。そんなとびきりのプレゼント、君にいっぱいあげよう。



december 25 / 2010
merry christmas!
光の粒でくっついて一生離れなくなってしまえばいい

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