「獄寺隼人の失恋を祝福してかんぱーい」
「うっせーよ、馬鹿女!」
「なー落ち着けって獄寺」
「野球馬鹿も便乗すんな!」

 中学の屋上で購買で買ってきたパンや飲み物、風紀委員長にバレないように持ち込んだお菓子も並べて。獄寺の失恋パーティーと書いて馬鹿騒ぎパーティーと読ませて屋上に集まった綱吉と山本と獄寺と、あたし。
 いつものメンバーだなと思えばいつの間にか吠えてる獄寺と其れを軽く受け流す山本が居てああもう、変わらないなあとどこか安心しながら目の前で犬と化した獄寺の背中に抱き着く。

「ほーら、落ち着けって獄寺ー」
「なっ!てめえ抱きつくな!」
「何だよ、うちらの仲じゃん?」
「俺は今失恋した身なんだよ!」

 自分から云ってる馬鹿寺に抱き着いたまま慰めてやるよって頭を弄って。獄寺が惚れた先輩が好きなのは綱吉で、それはあんまりだなって山本がいうのも此の関係ならあたしだって理解が出来る。だって相手が綱吉だとあんたは文句云えないもんね。
 でも其の事実を彼に告げないで振られてきました、それだけを云う獄寺って格好いいと思う。あたしだったら、あたしが獄寺だったら綱吉のせいにしてたかもしれないから。

「ねーねー獄寺、」
「ったく何なんだよ」
「いっそのことあたしに恋しなよ」

獄寺振るなんて勿体無いし、そう云いかけたが馬鹿云ってんじゃねえよ!って怒鳴られ背中から落とされたのを見事に山本がキャッチしてくれた。やべっ、少しおふざけが過ぎたか。恐る恐る目線を獄寺に合わせればでもどこか優しい顔で笑ってた。しかもありがとなって云ってくるし。
 理解出来ずにいたら支えてくれてた山本があたしの髪を撫でてきたからもう余計に思考停止。あたし、余計な事でも云ったんだろうか。

「なー獄寺、彼女なんか作らなくても俺等が淋しい思いさせねーからなっ」
「てめえが云うなよ、てめえが」
「ははっ、でも獄寺嬉しそうだぜ?」

 俺等は彼氏彼女みたいに別れたりしない仲だからずっと一緒だもんな。そんな山本の裏表の無い言葉で何と無く獄寺が笑ったのも理解出来た気がする。
 あれだよ、此れは青い春ってやつだよ。辛いことも半分こで嬉しいことも半分こって、あたしが云った冗談も獄寺に笑って欲しいからって思ってくれたのかも。でも失恋した人に向かって笑って欲しいだなんて酷い仲間なのかなあたしって。


「ねーねー獄寺」
「ったく今度は何だって…」
「獄寺が先輩を好きだった以上にあたし等は獄寺が好きだから」

 ろくに考えもせずに声に出した言葉も獄寺はまた笑顔で受け取ってくれた。あーもう、あたしが獄寺を好きになりそうだよ。
 でもまだ此の中の皆には恋はしなくていいや、誰が一番かってより皆が一番だし。皆が大好きだから。

「勿論山本や綱吉も好きだけどね」
「俺も皆が好きだぜっ」
「俺も」
「お前等…恥ずかしくねぇんかよ」

 全く?三人で少しバラけながらも云った思いは重なって屋上に響く。仲間っていいなー、そんな後ろから聞こえた山本の声に頷く。
 失恋パーティーでも馬鹿騒ぎパーティーでも無くていいから此の先も変わっていくあたしらが変わらずに集まったり出来たら今日の熱い青春の話を話題にだそう。親父になって子供を連れてきたとしても、此れだけは変わらずにいれたらって子供ながらに目に見えない神様に祈ってみた。