■ 7
朝から問屋回りをして、足がパンパンになる頃にはもうお昼である。
コンビニに寄ってお弁当を4つ購入し、帰路に着く。
家の前まで着くと、
「何してんだァァァアア!!」
「ちょ、おま、ふざけんなァァァァアア!!!」
「あ、やっちゃったアル」
と、不穏な声が聞こえてきた。
(……嫌な予感しかしない。)
「オイ、どーすんだよこれ。」
「あの時の顔、絶対思い入れ凄かったですもんね、これ」
「やっちゃったなー。やっちゃったアルなー」
「いや、そんないつかのネタ良いんだよ!読んでるやつももう覚えてねェよ!しかもお前のセリフじゃねーよ!」
「じゃあ、これを、こうやっ、……あ」
「やめろォォォオオ!!!もう触んなァァァアア!!」
「うわぁぁぁぁああ!!何やってくれてんのォォォオオ!!!」
「ここ何屋だよ!!たかしやって、何だよォォオオ!!たかしか!?たかし売ってんのか?!たかしなんだよ!!」
ガラッと、
勢いよく扉を開く。
「「「あ…」」」
「お昼にしませんか?」
私は何も聞かなかったことにして、皆さんにお昼ごはんを渡す。
「ありがとネ。……あのね、名前ごめんネ。名前の大事な看板……たかし屋さんになっちゃった」
「……神楽ちゃん。……あの、本当にすみません。僕ら、綺麗に直します!頑張りますんで!」
と頭を下げた素直な子供たち。銀髪もばつが悪そうに、米をもちゃもちゃと噛み終え、「……悪かったな。」と声を出した。
神楽ちゃんの出してきた看板を見ると、なんだか笑えてきてしまった。
「ふふっ、たかし屋さんって……ふふふっ」
こちらの顔色を伺ってくる三人に、こちらまで申し訳ない気持ちになってしまう。
「えいっ」
「「あっ!!!」」
「おい、」
「ここに、皆で一文字ずつ!4文字だし、丁度だね!」
看板の文字を全部真っ白に塗りつぶす。
「よし、乾くまでごはん食べましょ!」
振り返ると、
「うん!」「ハイ!」
元気な笑顔がこっちを向いていた。
2階の修理が終ったと業者の方が帰って行った頃も、万事屋一行はずっと一階のタイルの張り替えや壁の塗り替え、棚の塗り替えをこなしてくれている。
「みんな、ごめんね。長い時間ありがとう。私バイトの時間になっちゃったから、戸締まりだけお願いしても良いかな?もう程ほどで切り上げてくれて良いからね?ありがとう!」
「ありがとうございます。行ってらっしゃい!」
「まかせてネ」
「おー。」
見送られながら向かうバイトは、足取りが軽かった。
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