誰よりも恋をしていた
「なんで、俺なんか好きになっちゃったんだよ」
達海さんがそう言うから、俺はいよいよ涙を堪えきれなくて、小さく声を漏らして泣いた。
どうしてこの人はこんなにも、自分が嫌いなんだろう。いつも悪者は自分だけ、そんな風に振る舞って余計な悪口まで背負って。始めから全部話せばいいのに、どうしていつも誰かの荷物まで背負うのだろう。
俺は服の裾を握り締めて俯いた。どうしよう、涙が止まらない。
「15も歳の差あるし、男だし。それに椿なら、もっといい人が出来るよ」
達海さんからのそういう言葉が、俺にとっては一番辛い。歳の差があろうとも男だろうとも、そんな事達海さんならどうでもいい。気にしない。
「俺は、達海さんが、好き……大好き、です」
ぐちゃぐちゃになった顔を上げる事が出来ず、達海さんに届くかもわからない酷く小さな事でそう言った。
どうしても好きで諦められない存在なのに、達海さんは自分が嫌いだ。俺が好きな達海さんは、達海さん自身が嫌いなものだ。
でもそれは俺にどうにか出来る事じゃなくて、達海さんが望んでいる事でもなくて、どうしようもなく悲しくなった。
許してください。達海さんを、好きなのに何も出来ない俺を許してください。
「達海、さん……、ずっと」
誰よりも、片想いをしていた。