世界はそれをストーカーって呼ぶんだぜ?×6


あれから一週間が経った。しかし、彼女のあの姿が離れなかった。目を見開き、まるで死刑宣告を受けたかのように。

モヤモヤした感情を抱きながら、今日もバスケをする。汗を拭いていると赤司っちが近づいてきた。

「涼太、話があるそうだ」

「え?誰がっスか?」

「今から中庭に行け。五秒でな」

「んな、無茶苦茶っスよ!?」

「おや?俺の命令が聞けないとでも?」

赤司っちの雰囲気がどす黒くなるのを見て「いってきます!」とすぐさま駆け出す。そういえば、あのストーカーに告白されたのも中庭だったかなあ。

「いったい何なんだよ……」

歩いて行くと、一人の女生徒が立っていた。もしかして、この子が俺の呼び出し人?

「すいませーん?」

「き、黄瀬君!!」
「……えーっと、誰?」

こちらを振り向いた女生徒は驚くほど美人だった。桃っちも上回るほどだ。そして俺の記憶じゃ、こういう子はいなかった、はず。

「じゃあこの眼鏡、分かりますか?」

「!! もしかして、アンタ、」

黄瀬君なら気づいてくれるって思ってたんですよ!?」

「あ……いや…ごめん」

驚いて目が点の俺に「大丈夫ですか…?」と流石に心配してきた。

「赤司君に言われたんです。『振り向いてほしいなら、それ相応の努力をしろ』って。だからこの一週間、黄瀬君に会うのを我慢して、オシャレや修行をしてました!」

「……はあ。アンタはアホで更にバカっスわ」

「ああああアホ!?バカ!?」

「俺……アンタに酷いことを言ったのに」

「そんなの…別に構いません。黄瀬君はいつも正しいんですから」

「正しくなんかない。俺は……ひどいことを言った。本当にごめん!!」

「黄瀬君……」

頭を下げているとソイツは「それなら……」と何か言おうとしていた。何?と促すと、

「黄瀬君付き合ってください!」

「バスケが大事なんで、今は無理っス」

すると彼女は「じゃあ二番目の女でいいから!」とすがりついてきた。恐るべし、ストーカー。

「そんなに焦らなくても、俺の彼女席はもうアンタしかいないっスから」

「わあっ黄瀬君の……え…?」

ぼふん。真っ赤になるストーカーを見て俺は笑った。頬を右手で挟むと更に赤くなって面白い。

「ち、誓いのききききき鱚?!」

「…なんか文字がおかしくね?」

「き、キス!お目覚めのキスく、」

ください、まで言わさずに言われた通りに口を合わせる。軽く触れ合うだけのものであったが、彼女を赤面させるには十分だった。

「これからもストーキング、よろしくっス」

「わ、わかりました!」

俺の彼女はストーカーです。

世界はそれをストーカーって呼ぶんだぜ?[終わり]