世界はそれをストーカーって呼ぶんだぜ?×5

「もう、いい加減にしてくれよ!」

「っ!」

ひゅっ、息を飲んだ。黄瀬君の表情は、前髪が隠していてよく分からない。けれど、声が震えていました。

「黄瀬く、」
「気安く呼ぶな、ストーカー」

「……っ」

黄瀬君の冷ややかな視線と声色で何も言えません。彼の黄色が見えなくなるまで、ぼんやり座り込んでいました。

「ああ、君か」

「あなたは…?」

赤髪のジャージ姿の男の子が立っていました。あれ、いつから居たのでしょう…?声をかけられるまで全然気づきませんでした。

「ふうん……黄瀬はこういうのが…」

「あ、あの……?」

「俺は、赤司征十郎。バスケ部のキャプテンだ」

「バスケ部の…」

しかし、何故バスケ部のキャプテンがここに?もしかして、私が黄瀬君に迷惑をかけたことで…!びくりと身体を強張らせると彼は笑った。

「ふ、別に怖いことはしないよ。黄瀬が最近、気が散ってて困ってるんだ」

「もももも申し訳ありませんでした!!多分、いや絶対私の――」
「だからさ、ちょっと切らせてよ」

はい?シャキーンと赤司君が取り出したのは、ハサミ。ひぃいいいい!!やっぱり怖いことするんじゃないですかぁ!!

「ちょっと、目をつぶってて」

「ひぇええええ命は、命だけは…!」

「いいからつぶれ。潰すぞ」

「ひゃっ!」

おそるおそる目をつぶり静かに待つ。ぎゅっと手を握りしめ、正座をしました。シャキ、シャキ、シャキ。これは…私の顔の間近で起こっている音です…!

「うん、上出来だ。開けてもいいよ」

「は、い……。え?」

赤司君が差し出す鏡に映る私は、前髪が綺麗さっぱり目が隠れていません。お、おぉ…!匠の技!!

「どうだい?」

「素晴らしいです!わあ…!世界が明るい!」

目の前にある赤司君はにこりと綺麗に笑ったので、ちょっと顔が赤くなりました。

「あとは……その眼鏡か」

「え?や、止めてください!私から眼鏡を取らないでください!」

なんて抵抗しても赤司君はひょいっと簡単に取る。眼鏡を取られて右も左も分からない。裸眼の視力がD以下なのに……うぅ。

「ふうん……これは面白いな。よし、今からコンタクトを買いに行け」

「ええ?!そんなこと無理です!」

「行けるよな?」

きらりと光るハサミの尖端を突きつけられ、私はコクコクと頷きました。目の前の赤司君は「最初から言えばいいのに」と満足気な笑顔。

黄瀬君……あなたは大変な部に入部してしまったようですね。