11 璃里に氷柱が当たりそうになったその時、黒い巨人にひび割れるように、中から光が差してきた。 「アリババ君…!」 「チィっ…!」 「ジンが…崩れる」 しばらくすると、アリババが出てきた。 そしてジュダルが地面に落下した。ぐったりとした様子で、倒れ込んでいる。 イスナーンは素早く黒いドームのようなものにジュダルを包み、自分の方へ引き寄せた。 「また会おう、マギ…そして妖刀の持ち主よ」 「何故、それを…!?」 璃里は問いかけたが、その答えは返ってこなかった。イスナーンはジュダルと共に消えたからだ。 アラジンと璃里は、カシムの黒くなった身体を抱くアリババの元に向かった。 「これは……」 カシムの遺体は異様だった。黒くなり、肌の艶がなくなってまるで木が枯れたようだ。これが闇の金属器を使った者の末路。 「おかえり…アリババ君」 カシムを抱えながら号泣するアリババを見て、アラジンの目から涙が静かに落ちる。璃里も一粒、涙を落とし、静かに黙祷した。 888 一方、シンドバットに斬られたイスナーンの首は、海に沈んでいた。目から蛇が一匹這い出て、どこかへと去った。 そして、ジュダルを囲むようにぐるりとできた円。ジュダルを囲む者達は皆、顔を隠すように白い布を頭に纏い、金属でできた杖のような物を握っている。 「おや…」 「これは」 「やられましたな」 「やられましたねえ」 「しかし、致し方あるまい。聖宮で匿われていた例のマギが現れてはね」 「しかもそのマギとは、彼の選んだ王の器は、あの第一級特異点のあの男と手を組みつつある」 「ううむ……」 「案ずる必要はないでしょう。単にいつものソロモンの傲慢なる郷前でしょうから」 「似たようなことは、数世紀おきに何度かあったこと」 「我々はただ屈せずに立ち向かえばよいのです。それに、刀もそろそろ仕上がる頃」 「そうですね」 「あの刀も遂に完成ですか…」 「その通り……」 「我々は未来永劫、この世に暗黒を創り続けるといたしましょう」 「「「アル・サーメンのアジェンダのままに」」」 prev / next |