はちかけ! | ナノ



このまま足枷が付けられてしまうのだろうか。璃里は冷めきった目でブーデルを見ていた。一方のブーデルは、いい奴隷候補…いや、もしかしたら娼婦としても使えるな、とあれこれ思案していた。


「あ!りょ、領主様!ご機嫌はいかがでしょうか〜?」

「…………」


ブーデルが必死に機嫌をとろうとゴマをするが、領主ジャミルは璃里を見ていた。

璃里は目を逸らさずに睨み付けた。ジャミルは口角だけ上げると、ブーデルに話しかけた。


「ブーデル、この美しい女はどうしたんだ?」

「コイツは私めの商売道具に手を出したのですよ!その罰として――」
「俺に譲ってくれないか?」

「えっ!え、え…ええ、もちろん!」


畜生、だからコイツは気に食わないのだ。ブーデルは心の中で唾を吐いた。璃里はまた女と勘違いされたことに対して、眉に皺を寄せていた。


「すまないな、ブーデル」

「いえいえ、滅相もございません」


ジャミルが顎で「行け」と指示した。ブーデルはニコニコ笑いながら、去って行った。


「布を取ってやれ。お前の名前は?」

「……璃里です」

「そうか。今日からお前の主人は俺だ。ん?お前、奴隷じゃなかったのか」

「そうですね。ワタシ、占い師ですし」


ジャミルはふうんと納得したような言葉を漏らした。璃里は嫌な予感を察知したその時だった。


「ぐふっ!」

「主人に舐めた態度をとるんじゃないよ、君」

「げほっ!げほっ!」


ジャミルが璃里の腹を狙って蹴ったのだ。口から出るのは胃液だけだ。うずくまる璃里の艶がある前髪をわしづかみ、こう言い放った。


「俺がお前を躾てやる」

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