はちかけ! | ナノ



璃里の脳裏で過去が映し出される。


『妖刀マサムネという刀なんです!すごいんですよぉ、これ。なんだか曰く付きで、血を吸っているように赤いんですって!』

『兄様、これを使ってください』


「妹の、由璃です…」

「妹だと…?」


予想外の人物に、シンドバットは驚愕した。まさか彼の妹が。てっきり、アル・サーメンに近い銀行屋かと――。

ジュダルの『“親父達”が造った』という発言。ジュダルはアル・サーメンに身を置いている。つまり彼の“親父達”は、アル・サーメンを指すのだ。

つまり、彼の妹は限りなくアル・サーメンに近い位置にいる。


「こんな、ことが……!」

「し、シンドバットさん…?」

「璃里、君の妹は今どこに居るか知っているか?」

「いえ…。あの国を出たっきり、連絡を取らなかったものですから」

「そうだったな……」


それにしても、何故、彼は妹に対して怨みを持たないのか。シンドバットは疑問に思い、彼に尋ねた。


「それは…大切な妹ですから。彼女が使わなかったら、これが一生あの子の身に入るなんて…ワタシには耐えられません」

「璃里…」

「これは、ワタシへの戒めです。たとえ義理の母親であろうと、罪を犯したのは変わりませんから」

「なるほどな……」


璃里の固い決意に満ちた目を見てしまった以上、何も言えなかった。彼が考えて考え抜いた、ひとつの人生なのだから。


「無茶はするなよ、璃里」

「はい」

prev / next

bookmark
[ back to top ]





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -