3 璃里の脳裏で過去が映し出される。 『妖刀マサムネという刀なんです!すごいんですよぉ、これ。なんだか曰く付きで、血を吸っているように赤いんですって!』 『兄様、これを使ってください』 「妹の、由璃です…」 「妹だと…?」 予想外の人物に、シンドバットは驚愕した。まさか彼の妹が。てっきり、アル・サーメンに近い銀行屋かと――。 ジュダルの『“親父達”が造った』という発言。ジュダルはアル・サーメンに身を置いている。つまり彼の“親父達”は、アル・サーメンを指すのだ。 つまり、彼の妹は限りなくアル・サーメンに近い位置にいる。 「こんな、ことが……!」 「し、シンドバットさん…?」 「璃里、君の妹は今どこに居るか知っているか?」 「いえ…。あの国を出たっきり、連絡を取らなかったものですから」 「そうだったな……」 それにしても、何故、彼は妹に対して怨みを持たないのか。シンドバットは疑問に思い、彼に尋ねた。 「それは…大切な妹ですから。彼女が使わなかったら、これが一生あの子の身に入るなんて…ワタシには耐えられません」 「璃里…」 「これは、ワタシへの戒めです。たとえ義理の母親であろうと、罪を犯したのは変わりませんから」 「なるほどな……」 璃里の固い決意に満ちた目を見てしまった以上、何も言えなかった。彼が考えて考え抜いた、ひとつの人生なのだから。 「無茶はするなよ、璃里」 「はい」 prev / next |