はちかけ! | ナノ



「……大切にしろ、か」


マスルールに担がれながら聞いた言葉。寝台に寝かされた璃里は、ギュッと手のひらを握る。

籠の中に入れられて、ただ傍観に徹するなんて、僕には無理だ。兎に角、体力を取り戻さなければ。

璃里が寝台から身を起こしたちょうどその時、扉が叩かれた。


「俺だ。璃里、入ってもいいか」


聞き慣れた声だ。この声はシンドバット。多分、自分の妖刀についてだろう。


「どうぞ」


入ってきたのはシンドバット一人。璃里の顔を見て、彼は安心したのか頬を緩めた。


「よかった。顔色は良くなってきたようだな」

「みなさんのおかげで、なんとか」

「ちゃんと安静にしていたようだな。偉い、偉い。」

「……子供扱いは止めてください」


むっと見上げると、シンドバットは「俺はまだまだ子供だと思うけどな」と笑った。


「さて、本題に入ろうか。璃里の妖刀について。どこまで知っている?」

「彼は寄生し、ワタシの体力で生きていることしか…」

「そうだな、妖刀は寄生する刀だ。だが、アレは……君の体力を奪ってはいない」

「えっ…?」


瞠目してシンドバットを見る。彼は真剣な表情で、重い口を開く。


「血だよ」

「血…?」

「最近、立ち眩みや貧血がないか?それは妖刀で人を斬っていないから、璃里の血を啜っているんだ」

「そんな、ことが…!」


そんなおぞましいことが、あるなんて。人の血を啜りし化け物。それが妖刀の正体だった。

口に手を当てる璃里に、シンドバットは出来るだけ優しい声音で問う。


「あと聞きたいことがもう一つ。君は、誰に貰ったんだ?」

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