はちかけ! | ナノ


30

モルジアナは怪我人の手当てなど手伝いに行った。璃里は一人、アリババの家をノックした。


「璃里、もう大丈夫なのか?」

「ふふ、大丈夫ですよ。ほら」

「いや大丈夫じゃないだろ!?」


アラジンに付き添っていたアリババにも心配されていた。


「アラジン君の体調はどうですか?」

「何日かはこの状態だってさ…。はぁ……俺の、せいで…」

「……アリババ君に、元気が出るおまじないをしましょう」


何を、とアリババが聞き返す前に、璃里が彼の頬に唇を寄せた。ちゅっと可愛らしいリップ音が鳴る。


「な、なな、何を……!」

「お友達の…ピスティさんに教えてもらったんです」


耳を真っ赤にして笑う璃里に、アリババは「なんつー友達だよ」と苦笑した。


「アラジン君も、元気になりますように」


アラジンの手の甲に優しく唇を寄せる。

僕の力が、アラジン君にあげられたらいいのに。自分と同じくらい顔色が悪い彼の回復を、切に願った。


「あのさ…なんで敬語なんだよ」

「何がですか?」

「璃里のこと。俺達、ダチなんだから敬語抜きだろ?フツー」


アリババが不服そうに唇を尖らせた。璃里は困ったように、眉を八の字にさせた。


「ごめんなさい。僕…友達がいなくて」

「えっ、マジで?じゃあ俺がダチ一番目か!」

「そういうことになりますね」

「ダチっていうのはな、困った時に無条件で助けたり、なんでも相談できるんだよ」

「素晴らしいものですね……!じゃあ僕達は、と、友達…?」


当たり前だろー!とアリババは璃里の頭をぐしゃぐしゃに撫で回す。嬉しかった。友達と認められて。


「だから、敬語は禁止な!」

「は、う、うん!」

「はは、いい返事!」

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