29 「そうだ。アラジン君とアリババ君は?」 「アリババさんは、アラジンに付き添ってます」 「アリババ君…」 ふと、何気なく二つ離れた妹にするように、思わず彼女の頭を撫でようとした。慌てて手を引っ込めて、謝罪する。 「あっ、ご、ごめん。なんだかモルジアナが妹に見えてしまって」 「撫でてもいいですよ」 「し、失礼します…」 モルジアナの髪の毛は、猫のように柔らかく、それでいてほのかに温もりを感じられる。いい子、いい子と優しく撫でる。 ポツリとモルジアナの目から滴が零れた。 「いい子、いい子」 「ふっ…う、っく……」 ぽたりぽたり、朝日に照らされて輝きながら落ちていく滴に、璃里は綺麗だと思った。 モルジアナと由璃が重なって見えてしまう。彼女達は大きく違うのに。 (……僕にとって、妹に等しいんだ。モルジアナは) 「璃里…?」 「モルジアナが妹にきてくれないかなーって」 「私も、璃里みたいなお兄さんが欲しいです」 よしよしと一頻りモルジアナを撫で、璃里はアラジンの見舞いに行こうと言い出した。 「駄目ですよ。まだ璃里は貧血だし、」「平気ですよ?ほら」 「……全然力こぶがないじゃないですか」 むんと一の腕を出した璃里だが、柔らかそうで白く細い腕にしか見えなかった。 モルジアナが綺麗だと言うと、璃里は「モルジアナの方が綺麗ですよ」とくしゃりと笑うのだった。 prev / next |