はちかけ! | ナノ


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しかし、閻体はマスルールと互角の力。更に猿の様に跳ぶ男、閻心はモルジアナより速く、対抗することもできない。


「みんな!俺の後ろに下がるんだ!!」


アリババは豹のような剣士、閻技と対峙していた。アリババの王宮直伝の剣術でさえ、歯が立たない状況であった。

一方その頃、夏黄文は言い付けられた通りにジュダルの治療を行っていた。


(この戦いが早く…何者かが近づいている……)


夏黄文が振り向くと、そこには刀を持ち彼が探していた璃里の姿があった。


「これは、これは。大御寺家の璃里皇子ではありませんか」

「あ?お前、知ってんのか」

「ええ、隣国の皇子ですし、なにより…お母様を殺した、御子息ですから」


皮肉たっぷりに夏黄文が言えば、璃里はふんっと鼻で一笑した。


「母親殺し?“こいつ”は殺しちゃいねえよ」

「こいつ…?も、もしかして、妖刀の…!」

「そーだよ。今はぐっすり璃里坊っちゃんは寝ている。はぁーあ、ちょっとここで語らせてくれよ」

「は、はあ……」


どかりと地面に座り胡座をかく璃里(中身は妖刀マサムネだが)に、少なかれ夏黄文は緊張していた。

なんせ、相手は血を吸う化物という異名でも知られているのだ。


「まーそんなに畏まんなって。俺は今、結構機嫌がいいんだよ。アンタのお姫様のおかげでな」

「それは、良いことで…」


ジュダルの治療を続けながら、夏黄文は愛想笑いを浮かべていた。そしてまだ姫様の我が侭の方がいいと思っていた。

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