25 しかし、閻体はマスルールと互角の力。更に猿の様に跳ぶ男、閻心はモルジアナより速く、対抗することもできない。 「みんな!俺の後ろに下がるんだ!!」 アリババは豹のような剣士、閻技と対峙していた。アリババの王宮直伝の剣術でさえ、歯が立たない状況であった。 一方その頃、夏黄文は言い付けられた通りにジュダルの治療を行っていた。 (この戦いが早く…何者かが近づいている……) 夏黄文が振り向くと、そこには刀を持ち彼が探していた璃里の姿があった。 「これは、これは。大御寺家の璃里皇子ではありませんか」 「あ?お前、知ってんのか」 「ええ、隣国の皇子ですし、なにより…お母様を殺した、御子息ですから」 皮肉たっぷりに夏黄文が言えば、璃里はふんっと鼻で一笑した。 「母親殺し?“こいつ”は殺しちゃいねえよ」 「こいつ…?も、もしかして、妖刀の…!」 「そーだよ。今はぐっすり璃里坊っちゃんは寝ている。はぁーあ、ちょっとここで語らせてくれよ」 「は、はあ……」 どかりと地面に座り胡座をかく璃里(中身は妖刀マサムネだが)に、少なかれ夏黄文は緊張していた。 なんせ、相手は血を吸う化物という異名でも知られているのだ。 「まーそんなに畏まんなって。俺は今、結構機嫌がいいんだよ。アンタのお姫様のおかげでな」 「それは、良いことで…」 ジュダルの治療を続けながら、夏黄文は愛想笑いを浮かべていた。そしてまだ姫様の我が侭の方がいいと思っていた。 prev / next |