2 ぎゅるるる〜。腹の虫が鳴る。璃里は空腹と金欠に困っていた。 昨夜、泊まるホテルへ向かう道中に、小さな子供がうずくまっていた。情けは人の為成らず、という言葉と昔の自分を重ねて、有り金すべてをその子にあげてしまった。 故に、彼は自分の商売道具と着替えくらいしか持っていない。腹がへっていては、昨日のように詐欺はできない。香で自分も惑わされてしまう。 「参ったな…」 頭を抱える彼の鼻孔を果物の匂いがくすぐる。ああ、私だって食べたいさ!彼はそう思いながら、ふらふら匂いの原因へ近づいていった。 そこは多くの荷物があって、果物がたくさん乗っていた。璃里は目を輝かせ、手を伸ばすと青い瞳と目が合った。 「やあ、僕はアラジン!旅人さ。今は赤い果物を食べているところなんだ」 「へ、へぇ…」 旅人、つまり璃里と同じように盗み食いを働いている輩だ。小さい子なのに、苦労してるな。彼はアラジンという少年に対し、少し同情した。 「君の名前は?」 「…ワタシの名前は――」 「はい!荷物はちゃんと、…!」 璃里が入ってきた出入口が捲られた。彼は終わったな。そう確信したが、隣にいたアラジンは璃里に紹介したように、自分で名乗っていた。 「なんだ?俺にも見せてみろ」 「あ、いや、ブーデル様、ちょっと――」 入ってきたのは、昨日璃里が騙した男、ブーデルだった。今度こそ、終わったな。璃里は軽い目眩に襲われた。 prev / next |