はちかけ! | ナノ


12

シンドバッドは深くため息を吐くと、璃里の頭に手を置いた。


「まったく…辛い時は辛いって言いなさい」

「すいません…ワタシ、皆さんの役に立てなくて…!」

「いいや、璃里の活躍を聞いたよ。ああ……何故、俺に体調不良を伝えなかった?」

「それは…あの……」


シンドバッドさん達に迷惑をかけるわけにもいかなかった。そう言えばまたシンドバッドは怒るだろう。

どうしようと璃里が顔を附せると、シンドバッドは考えていることがわかり、彼の頭を撫でた。


「確かにお前の気持ちも分かる。だが、無理をさせてまで璃里を戦わせたくないんだ」

「でも!ワタシは、シンドバッドさんに仕えている身なんです!だからっげほっけほ…!」

「ほら、大声を出すと身体に障るぞ。ん…?熱がある。医者に診せた方がいいな…」


そうか、自分は熱があるのか。ぼんやりとした意識のなか、瞳を潤ませ璃里はため息を吐く。

情けない。男たる者、強くなければならない。父の言葉が頭を締め付ける。


「とりあえず、医者を探してくる。璃里はもう少し寝ていろ」

「すみません…あの、モルジアナちゃんとアラジン君とアリババ君は?」


シンドバットは璃里を安心させるように微笑みながら「三人とも無事だ」と言った。

よかった。安堵した彼は、アリババがどんな決断を、過去を、背負ったかは知らされなかった。


(この子は…まだ子供だ)


璃里を無理矢理ベッドに寝かしつけ、額を優しく撫でる。成長するのは、少しずつでいい。大切なことは進化を続けることだ。シンドバットは心の中で彼に語りかけた。


(君は一体――何を隠しているんだ…?)

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