10 深い霧が街を埋めていく。そんな幻想的な風景に、殺伐とした空気が流れていた。 璃里はアラジン達と見張りをしていた。そこに赤い霧がふわりと漂ってきた。いち早く察知したモルジアナは、両腕にアラジンと璃里を抱き上げた。 「しっかり掴まっていてください!」 「えっ!?」「うわあ!?」 ひゅんっとファナリスの特化した筋力で、屋根の上に上がる。そこにはジャーファルがいた。 「ジャーファルさん!これは一体…?」 「麻痺毒性の植物にも似た臭いが霧からします…。そしてその発生源に、彼らはいるでしょう」 「こんな霧に……」 戸惑っている場合ではない。彼らは魔法に似たものを使うという。ならば自分はどうすべきか。妖刀を抜刀するか、否か。 「行きましょう」 「はい」 屋根から降り、短刀を構える。あちらは多数だが、アラジン、モルジアナ、ジャーファルがいれば余裕で片付くはず。 「妖刀なんかに、頼って堪るか……!」 僕も役に立ちたい。璃里は殴りかかってくる団員らを、必死にかわして手刀を首に入れ気絶させていく。 マスルールから自分の身を守るために習った体術だ。故郷にいた時も、武道は毎日習っていた。傷だらけになりながら、食らいついていく。 「ぐっ!このガキ、手こずらせやがって!」 「っ!かは……!」 鳩尾に男の拳が入り、咳き込みながら崩れ落ちた。目の前がぼんやりと霞む。また、僕は妖刀に頼るのか…? 「おー、綺麗に入ったなア」 「ククク!あ?意外とキレーな顔してんじゃねえか」 「う……離、せ…!」 その時だった。モルジアナが男に強烈な踵落としを食らわせ、璃里を救い出した。 「大丈夫ですか?」 「ありがと…ございます。げほっけほけほ!」 貧血と男達の暴行により、璃里の体力は限界だった。それでもまだ、彼は立ち上がりジャーファルへ加勢に行く。 prev / next |