6 璃里が部屋に戻った後、シンドバッドは酒を飲んでいるとジャーファルが話しかけた。 「何の真似ですか」 「ん?本人の意向を汲み取ったまでだが?」 「……大方、璃里の実力がどれほどか知りたかったんでしょう」 「ふふ、彼はまだ俺達に見せていない力があるに違いない」 ゆらゆら酒の入ったグラスの水面を揺らす。それを聞いたジャーファルはため息を吐いた。 「何ですか、その力とは」 「分からん。俺の勘だ」 シンドバッド達は未だ、璃里の妖刀を見たことがない。シャルルカンに煽られ、短刀で手合わせをしているところは見た。 あとは占いが得意だと言って、八人将の一人であるヤムライハを占っていた。そんな占い師である彼に何の力が。 「厄介なことじゃなければ…いいんですが」 「元奴隷で、母親殺しの家出少年…か」 「は?母親殺し…?ちょっと聞いてませんよ、シン!」 「だって言ってないもん」 「もんじゃねえだろ!あーもう、なんで重要なところを!」 グラスの酒を煽り、シンドバッドはぼんやりと月を見る。彼は一人で泣いていないだろうか。 マスルールと相部屋に戻った璃里は、火を灯したままベッドに入った。こうしなければ、またあの発作が起きかねない。 「役に立ちたい……強く、なりたい……」 ギュッと自分の手のひらに力を入れる。最近妖刀を出していないが、少し貧血気味だ。 こんな体調で、霧の団の討伐の手助けができるのだろうかと不安を抱えながら目を閉じた。 璃里が眠りに落ちた後、マスルールはやっと部屋に戻って来た。そっとドアを開けると、ランプが点いていた。 まだ起きているのかとマスルールは璃里のベッドを覗き込んだら、すやすや寝息を立てていた。 「…おやすみ」 灯りが無ければ眠れないという璃里のために、ランプを点けたままにする。布団を頭までかぶり、マスルールはそのまま眠った。 prev / next |