5 璃里に対しての説教が終わった後、ジャーファルが彼の頭を撫でた。彼は床に正座していたので、必然的に見上げる形になる。 「あの、ジャーファルさん…?」 「あまり無茶をしないでください。曲がりなりにも、貴方は大御寺家の」 「違います!今のワタシは…シンドバッドさんに仕えている身です…!」 「……君も頑固者だな」 ムッと頬を膨らませる璃里の頬を、ジャーファルは苦笑した。 最初の時は、畏まって子供らしくない子だった。今は、こうして素の表情を見せてくれるようになった。 厳しく彼を叱っているジャーファルだが、彼は彼で璃里の身を案じて、説教をしたり灸を据えている。 できればシンドバッドの護衛よりも、食客として迎えて彼を彼の母国に帰したい。 しかし、璃里はそれを断固拒否し、ジャーファルの叱咤に耐えながら日々を過ごしていた。 「……璃里も大変だな」 「マスルールさん、何が大変なんですか?」 「や…気づいてないならいい」 「ともかく、今回はホテルで大人しくしていてください」 「そんな!ワタシだけ…駄目ですよ。それに、シンドバッドさんの金属器がありませんし……」 そうだった。嫌なことを思い出し、ジャーファルは頭を抱えた。 「それなら璃里に手伝ってもらえばいい」 「しかし…!」 「お前もそう思うんだろ?」 「シンドバッドさん…!」 シンドバッドが璃里にウインクを送れば、ジャーファルはため息を吐いた。まったく、面倒なことに。 セクハラ上司のシンドバッド。怖いけど心配性のジャーファル。寡黙で仲間思いのマスルール。素敵な人達に自分は会えたと璃里は思った。 prev / next |