はちかけ! | ナノ



バルバッドの王、アブマドに霧の団を倒すと言い放ったシンドバッドは、部屋に戻った。

交渉の場に居なかった璃里に、ジャーファルが事の顛末を話した。
【霧の団】、彼らは霧が出る夜を狙って、富裕層の泊まる部屋や家を襲う。そしてその頭が――


「怪傑【アリババ】」
「アリババ!?」

「璃里、知っているのか?」

「あ、いえ、同じ名前の人を知っていて……すみません、続けてください」

「……それで、【霧の団】が出没する場所と日を特定しました。出没する日は――」


まさか、あの優しいアリババ君が。璃里の脳裏に浮かぶのは、勇敢に自分に立ち向かう金髪の少年。

仲間になろうと言ってくれた優しい彼が、人を襲って金銀財宝を盗む泥棒なんて――


「説明はこれくらいです。それで、シン。貴方の金属器は?」

「じゃ、ワタシ、アラジン君のところに」
「璃里、貴方も居なさい」

「……はい」

「盗まれてしまった」

「……アンタって人は…!!」


ああ、もうジャーファルさんがイライラしてるよ…!マスルールの右腕にしがみつき、背後に隠れる璃里。意味があるのだろうかとマスルールは思ったが、無言で受け入れた。


「馬鹿ですか?あれが無くて、どうやって退治するんですか!?」

「……何とかできる」

「しっかりしてください…。自覚があるのか?七海の覇王よ!」

「それ言うの恥ずかしくないか?」

「アンタのアホの方が恥ずかしいわ!!」


ごもっともである。とにかくここからずらかりたかった璃里は、そろりとマスルールの背後から逃げようとした。が、


「璃里。なに逃げようとしているんだ?」

「うう……」


ギリギリとジャーファルに両腕を紐に縛られてしまった。

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