はちかけ! | ナノ


18

「で、デカッ!?」

「誰だ、王になるのは?フン、お主か?黒い器…だが、他人によって作られた贋作じゃ」

「ひ、ヒイ…っ!」

「小娘か?違うな、他人に縛られた器…。だが、強い生命力を感じる。ほう、そこの坊主か?いや、執念に支配された器…。そして悪しき力に飲み込まれておる」


ジャミル、モルジアナ、璃里と見てきた大男は、アリババを見てプッと吹き出した。アリババは「なんだよこいつ!?」とぶちギレていたが、大男は無視を決め込んだ。


「おお!これはこれは、マギよ…!」


大男がアラジンに向かって、恭しく礼をする。すると、彼の笛から青い巨大な人が出てきた。アラジンがウーゴ君と呼ぶ友達だ。


「お、おっきい…!」

「ふむふむ、なるほど」

「ジェスチャーだけで通じてんのかよ…?」


ウーゴ君の身振り手振りで理解したのか、大男は彼らに向かって、自己紹介を始めた。


「我が名はアモン。礼節と厳格から作られしジンでございます。あなた方の迷宮完全攻略を認めます…!」

「クッ、クリアーかっ!?」

「マギってどういうことだい?」

「マギとは――」


璃里は目の前で起こっていることが本物か確認するため、頬をつねった。夢じゃない。本当だ。

モルジアナちゃん、帰ろうと声をかけようとしたが、彼女はぼんやりアラジンとアリババを見ていた。


「っ!?何者かがこの出口を塞ごうとしておる」

「でっ、出られるのか!?なあ!!」

「ええい、うるさい小僧め。今から出してやるから黙っておれ」

「おねいさん達…行かないのかい?」

「……思えば、キミ達にはヒドイことをした。本当に申し訳ない…!」


そう深々と頭を下げれば、アラジンが「気にしてないさ!」と明るい声で返した。恐る恐る顔を上げたら、太陽のように眩しい笑顔のアラジンがいた。


「さあ、早く乗れ!出口が無くなる前に!」

「モルジアナちゃん、帰ろう」

「私は……」


ジャミルの元へ行こうとしたモルジアナの前に、血まみれのゴルタスが立ちはだかる。

満身創痍の彼の絞り出すような声に、その場にいた全員の胸が苦しくなった。


「モルジアナ……お前はギリギリのところでプライドを保っていた…。俺はもう……故郷の者に、顔を合わせられない」

「ゴルタス…!」

「行け、モルジアナ…っ!そして、璃里。お前はもっと強くなれる……その刀が無くても、お前には力がある…」

「ゴルタス、さん…っ!ありがとう、ございました!!」


涙で視界は滲んでいた。璃里は軽くなった足で、モルジアナを迎えに行く。さよなら、ゴルタスさん。

二人はゴルタスとジャミルに背を向け、歩き出した。輝く未来へ。

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