17 ジャミルは、壁にぶち当たって痛みで呻いているアリババに、容赦ない暴力をふるった。そして一頻り済んだのか、今度はモルジアナに目を向けた。 「こいつを殺せ」 「えっ…?」 「これで殺すんだ。できるよな、モルジアナ?」 剣を渡されたモルジアナは、幼い頃の記憶を思い出していた。命令をきかなければ殺される。自分の目の前で、何人もの人の命が消えた。 殺しちゃダメだ。璃里の悲しげな声が聞こえた気がした。だが、彼はもう刀に飲み込まれている。聞こえるはずがないのだ。そしてジャミルの殺せ、殺せという声しか耳に入らない。 モルジアナが剣を下ろしたその刹那、アリババに突き刺さろうとしていた部分が、キラキラと消えた。 驚いたモルジアナが見たその先には、何の変哲もない石杖を持ったアラジンがいた。 「アリババ君!大丈夫かい?」 「あ、あぁ…それよりあの女、結構ヤバいぞ。隣の黒髪もやり手だ…っ!」 「すごい…先生が言っていた通りだ!創世の魔法使い、マギ…!」 「何のことかわかんねーけど、とりあえず、殺す」 我を取り戻したモルジアナは、目の前にいるアリババに攻撃を仕掛けようとした。が、それはアラジンの不思議な力によって叶わなかった。 柔らかな泡のようなもので、モルジアナと璃里は包まれた。絶体絶命、モルジアナと璃里を失ったジャミルの状況は、正しくその言葉通りだ。 「おじさん、その笛を返してよ」 「ま、待ってくれ!俺はチーシャンの町を迷宮の町へと起こし、経済も、人も、全て成し遂げた!!」 「そう。でも、僕にはそんなにすごい人のように見えないけど」 アラジンにバッサリと切られたジャミルは、茫然自失してしまった。璃里は可哀想な人だと同情しながら、妖刀を無理矢理口に収めた(妖刀は嫌々言っていたが、強行手段)。 「あれ…?なんかアラジンの笛、光ってない?」 「ほんとだ!あ、こうやって照らしていったら……」 アラジンが笛から出る光を次々と当てていく。みるみるうちに、迷宮と相応しい黄金色に包まれた。すると、天井にも届きそうな大男が現れたではないか。 prev / next |