1 シンドリアに来て早半年。こもりがちだったアリババは、璃里と周囲の人達の支えにより立ち直って、栄養を摂るようになった。 「そういえばアリババ君、立ち直ったみたいですね」 璃里は横で同じように書類を持ち、歩くジャーファルにそう言った。 「そうですね。一時期はどうなることかと……」 「……璃里も元気になったようですし」 「えっ?」 「君も結構顔色が悪くて、雰囲気がピリピリしていました」 自覚していなかった部分を指摘され、璃里はジャーファルさんには敵わないと思いつつ頭を下げた。 「ありがとうございます。こんなワタシにも、目をかけてくださって」 「いいえ。璃里は大切な仲間ですから」 「ジャーファルさん…!」 ジャーファルが涙ぐむ璃里に苦笑していると、王の帰還の知らせが入った。それを聞いた途端、ジャーファルは顔を引き締めた。 「では、私は迎えに行きますね」 「は、はい!書類、僕が持って行きます」 「ああ、ありがとう」 にこりと微笑んだジャーファルに、璃里もぎこちなく笑った。 prev / next |