はちかけ! | ナノ


16

よく分からない建物の中に入ってしまったようだ。息絶え絶えになりながら、必死に歩みを進める璃里。彼の体力は、限界に近かった。


「っ、モルジアナちゃん!!」


璃里の目に映ったのは、モルジアナがアリババと必死に戦っているところだった。ギュッと短刀を握りしめる。私には、彼女を守れるほどの力があるのだろうか。


【力が欲しいなら、俺を出せよ】
【あの領主はつまんねえし、やっぱお前が一番だわ】
【さぁ、望めよ。璃里!!】


璃里は迷っていた。刻一刻と時間は過ぎていく。もし刀を出したら?モルジアナを殺さないという百%の自信はあるか?金髪の少年を殺さない確率は?


「璃里、お前も加勢してこい」


ジャミルに背中を蹴られ、苦痛の表情を浮かべる璃里。大丈夫、痛くない。義母から受けた暴力の方が、数倍、心が痛む。


「妖刀、マサムネ…!」

「殺れ、璃里!!」

「言われなくても、殺るっつうの」

「な、なんだ!?こいつ…変だぞ…!?」

「まさかっ…!」


モルジアナとアリババの間を割って入った璃里。彼の顔にはもう恐れや不安、負の感情は消え去っていた。享楽、恍惚の笑みを浮かべ、アリババに切りつけていた。


「璃里さん……あの力を…!」

「ちぃっ!なんつー強さだ!!」

「おい女ぁ、俺の邪魔をすんじゃねぇぞ」

「……はい」


モルジアナは豹変した璃里に、恐怖を覚えていた。この人は、璃里さんじゃなくて、ジャミルのような残酷な人…!


「なぁ、ここは迷宮だ。身分も何も関係ない。お前はその領主サマから離れられるんだぜ?だから、俺と一緒に来ないか?もちろん、隣の子も」


そう言ったアリババは、モルジアナに手を差し伸べた。突然の行動にジャミルは狼狽え「行くな、モルジアナ!璃里!」と叫んだ。

モルジアナはアリババへ歩み寄ると、すらりと伸びた足で、アリババの横っ腹を蹴り上げた。璃里はその様子を見て、ニヤリと笑った。


「残念だったな。ていうか、この足枷邪魔なんだけど」

prev / next

bookmark
[ back to top ]





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -