17 「……けねえ」 「え?」 「情けねえよ……俺」 「アリババ君……適材適所、ってことですよ。シンドバットさんには、広い人脈があって、こういう交渉に向いているんです」 着物の襟をただしながら璃里は言う。アリババには、アリババの仕事があるのではないか、と。 「ありがとな…璃里。勝手に拗ねてた自分が恥ずかしいわ」 「よかったです。アリババ君が元気にしていないと、アラジン君も元気を無くしてしまいますから」 「そうだ!今アラジンはどこにいるんだ?」 「えーっと……。とりあえず立ち上がらせてください…」 「あっ、ごめん!……ほら」 アリババは座っている璃里に手を差し出した。璃里はにこりと笑って、その手を掴み――― 「ぐえっ!?」 「すー…すー……」 「お、おい!璃里!起きてくれよ…!」 アリババが籠ってから璃里はあまり眠れていなかった。安心したせいか、その反動で今アリババを押し倒してしまっているのだ。 「……ありがとな、璃里」 慈しむように璃里の前髪を手ですく。すると、ふわりと甘い果実のような匂いが漂った。 「すげー…懐かしい匂い……」 この匂いは母親の匂いだ。娼婦をしながら自分を守り、育て上げてくれた母親。 アリババは璃里を抱えて、自分の寝台に寝かせ、床に雑魚寝したのであった。 prev / next |