はちかけ! | ナノ



「由璃……これはどういうことだ!」

「あら、何故お怒りになるのかが不思議ですわ」

「母上を捕縛して、ただじゃ済まされないぞ!!今すぐ解きなさい!」

「そうよ!さあ、璃里…!いい子だからほどいてちょうだい…!」


璃里は由璃に話があると呼び出された。着いていくと、そこに義母が両腕と両足を縛られて横に寝かされていたのだ。


「兄様、今こそ、この愚鈍で私達を虐げてきた女を、排除する!!」

「馬鹿ねえ、由璃。あんたはアタシの子だと思っていたけど、そこにいる馬鹿と同胞だなんて!」

「お前!!兄様のことを馬鹿にするな!!!」

「落ち着け、由璃!」


璃里が必死に由璃を押さえつけると、弥生はおかしそうに笑った。彼が睨み付けると、弥生は深く反省したような表情をした。


「ごめんね、あなた達への振るった……今までの非礼や暴力を謝らせて…!」

「……わかったわ。兄様が殺さないなら、私が殺す!」

「ゆ、由璃!?馬鹿な真似は止せ!!」

「殺す。コイツ絶対殺す」


由璃の目が極限にまで開いていた。璃里はこのままじゃ弥生は殺されるとわかった。血は繋がっていない妹だが、優しくて可愛い妹だ。璃里は、口を開いた。


「わかった。……私が、殺す」

「璃里!?どうしてよ!!謝ったじゃない!!来るな来るな来るなァァアア!!!」


あれから九年が過ぎた。璃里は義母の姿を見て、この人はこんなに小さかっただろうかと不思議に思った。小さな頃は彼女のことが大きく恐ろしく見えた。

ところがどうだ。今じゃただ喚いている女にしか過ぎない。こいつも人間なのだ。璃里が刀を握り締めていると、由璃が何かを差し出した。


「これはなんだ…?」

「兄様に似合うと思って、つい買ってしまいました」

「そうか……」

「やめてやめてやめてェェ!!助けて!由璃助けて!!!」

「このババアうるさあい。ね、兄様、早くサクッと斬って下さい」


璃里は操られるように、由璃から貰った刀を構える。握っている手のひらから何かが込み上げてくる。

苛立ち、殺意、そして憎悪。璃里はそのまま振り上げた。

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