!ともだち
目が覚めた。まだ頭はぼんやりしているが、身体のダルさは抜けている。外はもう真っ暗になっていた。
栄司はもう帰ったのか。そういや、眠りに落ちる直前に、栄司が俺の名前を呼んだ気がする。
ふと視線を下に落とすと、栄司がすやすや寝息をたて寝ていた。久しぶりに見る寝顔。加虐心が疼き、健康的な肌色の頬をつつく。
「ん、う……」
「栄司…」
薄く目が開かれる。まだ寝ぼけているみたいだ。栄司は俺の腰に両腕を回し、って!?
「かず、なり……」
「お、おい?起きて、」
「ぎゅー」
そのまま栄司に身体を抱き寄せられ、抱擁された。ドキドキと心臓が早鐘を打つ。
「かずなりは」
「っ、うん」
耳の近くで囁かれる舌ったらずな口調に、昔の栄司が思い出される。俺と同じくらいの身長で、いつも悪ふざけしてた俺と栄司。
「ぼくのこと、きらわないで」
「うん」
「ずっといっしょに、いて」
「うん」
肩に乗っかる栄司の頭を撫でる。柔らかくて、さわり心地の良い髪が手のひらに触れる。
「それから……」
最後の一言は、俺の心をぐちゃぐちゃにした。
「ずっと、ともだちでいてね」
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