!おやすみ、
リンゴを食べ終え、しんと静まった俺の部屋。沈黙がなんとなく痒い。いつもなら俺が軽口を叩くけど、今日は風邪のせいかそういう気にならない。
「そういえばさ、」
栄司が口を開く。ぼんやりと俺は形のいい唇を見て、エロいなあと思った。
「緑間がちょっと心配してた。意外だよな。あいつ、傍若無人だと思ってたけど」
ちらりと見える白い歯は、さっき俺と食っていたリンゴをかじっていて、
「高尾?」
「な、なんだよ」
気づいたら栄司の顔が目と鼻の先にあってびっくりした。こいつ、いつの間に。
「やっぱまだ熱があるか……。あの緑間がさっさと治せってさ」
「へえ…」
俺の生返事に栄司は眉間に皺を寄せた。ぽんぽんと俺の頭を叩くと、布団をかぶせた。
「寝ろ」
「栄司、」
「僕はここにいるから。おばさんが帰ってくるまでだけど」
「……うん」
「いい子いい子」
子供扱いにムカッとしたが、眠気でぼんやりしてきた視界に抗えず、そのままゆっくりと瞼を下ろした。
「おやすみ、和成」
(47/52)