!かわいい
「高尾、あーん」
「いや、これくらい……」
なんていうか、いつもと立場が逆になってね?そう思っていると、栄司はぐいぐいとフォークに刺したリンゴを突き出してくる。
「いいから口を開けて」
「っ……あー」
熱で浮かされた頭でも、恥ずかしかった。口に入ってきたリンゴは冷たくて、俺の熱で溶けてしまう。
「んむ、うまい」
「だろ?八百屋のおっちゃんのオススメ」
「……お前どこまで買いに行ってんだよ」
「んー?そんなに遠くないけど。学校の裏にあったぞ」
栄司はすりおろしていない、リンゴを丸かじりしながら答えた。すりおろしたリンゴはもうない。
「あ、こら!」
「うま」
栄司がかじってるリンゴを横からかじってやった。美味い。
もぐもぐ食べる俺を見て、栄司はフッと笑った。なんだこいつ、人の顔を見て笑うなんて。
「なんだよ」
「高尾かわいい」
「ブッッ!!!」
「おいおい吹き出すなよ〜」
「だって…ゲホッ!ゲホゲホッ」
可愛いって、それはお前だろ。吹き出したのは仕方ないよな。上体をくの字にしてむせる俺の背中を、栄司は苦笑しながら優しく擦ってくれた。
「はー……」
「もう大丈夫?」
「まあ…」
お前と二人っきりな時点で大丈夫じゃないけどな。
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