!男に二言はない
全て平らげた僕達は、山田さんに断りを入れて、残り少ない時間を楽しむことにした。ごめん、山田さんと緑間達。
「なー栄司」
「なんだよ」
人がいない場所を高尾がずんずん突き進む。え、ちょっと、ここ屋台無くね…?
「その頬、どうしたんだよ」
「……これは、ちょっと転んでな」
「ふーん」
「てか、ここ屋台無いじゃん…。あっち……高尾?」
ぎゅっと袖を掴まれた。高尾がむすっとした拗ね顔だ。あ、バレた。
「転んだの、嘘だろ」
「……違うって」
「俺、お前が殴られてるところ見てさ、走ったんだよ。けど宮地センパイが先に撃退してて……」
「あー…」
「幼なじみがピンチだったのに助けられねー俺は情けないし、お前は嘘つくし」
「ごめん…」
更にぎゅっと袖を掴む力が強くなった。あれれ、また変なこと言ったか…?
高尾がおもむろに小指を出してきた。どういうことかと視線を遣れば、どうやら指切りという意味だ。
「小学生かよ」
「うっせー。ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら針千本……一万本のーます、指切った!」
「一万!?」
「男に二言はないぞ」
にやっと不敵に笑った高尾に僕は「そーだな」としか返せなかった。
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