!早く言った方がいい
殴る、蹴るなどといったスタンダードな暴力をふるって満足したのか、ふとリーダー格の男が口を開いた。
「ていうかよぉ、俺、コイツ見たことがある気がすんだよな…」
「え?マジ?知り合いかよ!」
「おい、名前言えよ」
僕も薄々と勘づいていたんだよ。小6の時にいじめてきた、アイツに似ているってこと。
「……誰が教えるか、っ!」
「言えっつってんだろ」
「おほっ!タクヤバすぎィ」
「早く言った方がいいって〜〜」
震える声で名前を言うと、その瞬間、目の前の男がにやりと笑った。
「久しぶりじゃねえか、栄司チャン」
「やっぱり知り合いぃ?」
「コイツはなぁ、俺の女を奪った挙句、捨てたんだよ」
「違う!!僕はそんなこと、」
「まだ否定すんのかよ?まー小学生の時の話だしなあ。チャラにしてやるよ」
「うは!タク心広すぎ〜」
お前の好きな女子が僕に告白してきただけだろ…。これを言ってしまうと、空気も事も悪化するので言わない。
そんなことより早く帰りたい。猫耳も衣装も土で汚れてしまった。作ってもらったんだし、これ以上ボロボロにしたくない。
「…って俺がチャラにするわけねえだろ」
「っ!もういいだろ…。これ以上汚したくないんだよ……。金なら取ってくるから!」
「うっせえな。ゴミのくせに喋んじゃねえ」
「タクったら鬼畜ぅ!」
男が拳を振り上げようとしたその時、誰かが腕をがっちり掴んだ。驚いて目を遣れば、バスケ部の宮地先輩がいた。
「てめえら、何してんだよ」
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