!裏に行こう
チラシを配り終えた後、暇になった僕達は一端教室へ戻ることにした。
「ただいまーってうわ!?」
「おー田中お疲れ」
「井熊、これどういう騒ぎ?」
「緑間だよ、緑間」
なんでも井熊が言うには、客が緑間にぶつかってしまい、緑間のメガネを壊してしまったという。
メガネがなくなった緑間は、視力が相当悪いらしく、めちゃくちゃ顔を近づけなければ見えないようだ。
で、緑間の隠されたイケメンマスクが出てきて、クラスの女子が集まった、と。
「チッ、これだからイケメンは…」
「そういえば、井熊は熊なんだな。井熊だけに?」
「っるせーな猫耳!ていうかお前止めてこいよ」
「猫耳言うな!仕方ない……はあ」
ため息一つ吐き、騒ぎの中心に向かう。あーあ、文化祭の実行委員じゃなければなあ。
「おい緑間」
「その声は、田中か?」
「顔ちけーよ!予備のメガネないの?」
「今日に限ってないのだよ。高尾はいなくなり……面倒なことになった」
「あー確かに僕も面倒だ。とりあえず裏に行こう」
目の見えない緑間の手を引き、人気のないところへ撤退する。緑間の手を引いたところで、黄色い歓声が上がったのは何故だろう。
「マジで見えない?」
「当たり前だ。俺はメガネがないと困るのだよ」
「んーなんか、なかったかな……お?」
ポケットの中をあさってたら、メガネが出てきた。これ、中学の文化祭で借りたやつだ!茶ぶちだけど、まあいいか。
「緑間、とりあえずこれをかけとけ」
「度がないぞ?」
「ないよりはマシだ」
「む…仕方ない」
カチャっとかけた緑間は、普段の黒ぶちじゃなくて、茶色だからなんか、雰囲気が柔らかくなった。
あー…これはこれでダメかな…?
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