!何か隠してんの
俺はぼんやりと意見を募る栄司を見ていた。なんていうか、やっぱり親友以上にはなれねえっていうか…。
「はー疲れた。高尾は何するの?」
「んー…なんでもいーわ」
「そっか。緑間はミイラ男か」
「何故ミイラ男なのだよ!?」
「だっていつも左手をテーピングで巻いてるから」
「これは人事を尽くすためだ。決して仮装ではない」
いつもならここで乗っかって真ちゃんをいじるけど、今はそういう気分じゃない。あー俺、女に産まれたかったわ。
「なあ、熱でもあるの?」
気づいたら、栄司の手が額に当たりそうだった。
「っ!いや、なんでもない。寝不足なんだよ」
つい、栄司の手を叩いてしまった。うわ、俺サイテーな奴。自虐的にへらへら笑ったら、栄司は眉に皺を寄せ、席を立ってしまった。
「……あ、真ちゃんはミイラ男?」
「いつまで引っ張るのだよ、そのネタを。それより、田中に謝った方がいいんじゃないか?」
「そうだなー…」
返事をしながら、机に顔をべた、と置いた。分かってるって。でも、また俺は栄司の手を避けてしまいそうな気がする。
「…山田って、ぜってー栄司のこと、狙っているよな」
「そうだな」
「……真ちゃん、いつもより変。何か隠してんの」
「いつもより変とはなんだ。何も隠していない」
ふうん。気の抜けた返事をして、少し伸びてきた前髪がうざったくなった。
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