!楽しいもん
僕達、文化祭実行委員は、放課後にある委員会に出る羽目になった。
早く竹刀を持ちたいのに…。疼く気持ちを抑え、山田さんと一緒にその会場まで向かった。
「なんか、田中君と二人っきりってなかなか無いよね」
「そうだね。いつもは話さないし」
「だよねー。あたし、いつもマネージャーの仕事ばっかりだし、眺めるだけだったけど…チャンスね」
「ん?何か言った?」
首を傾げると山田さんは何でもないと笑って答えた。まあ確かに井熊の言う通り、笑うと更に可愛くなるな。
「栄司君」
「うん?」
「文化祭、成功させようね!」
「そうだね」
僕的には楽しければいいんだけど。張り切っている山田さんを萎えさせるのも、アレだよね。
彼女はザ・女子って感じで、目から炎を出さんばかりに意気込んでいた。
……僕も、目から炎を出した方がいいのかな…?
会議は約一時間で終わった。他のクラスは演劇やダンス、催し物をするみたいだ。
そんな中で僕達の『お化け屋敷喫茶』は一際目立っていた。うーん…何気ない一言がこうなってしまうとは。
「あ、そういえばさ」
「何?」
「僕と組んでよかった?実行委員の」
ずっと気になっていたことを聞いてみたら、山田さんは目を丸くして、笑った。
「よかったよ!栄司君と話せるし、楽しいもん」
「……そっか」
「あれ?栄司君、照れてる?」
「照れてないよ」
どこのバカップルかと思われるくらい、僕と山田さんの距離は急接近していた。
(32/52)