!実行委員、よろしく
緑間にキス…?されてから2週間。それから何もない。
平然とした態度で挨拶を返してきたし、むしろ気にしているのは僕だけなのだろうか。
無論このことは高尾に言っていない。いくら幼なじみで隣近所に住んでいても、話せる物のゾーンが決まっているのだ。
僕も「男とキスしちゃった」なんて相談されたら、何を言えばいいか分からないし。
「そんで、今から文化祭の実行委員を決めるから――あ、田中暇そうだな」
突然ホームルーム委員の奴に当てられ、一気に思考が現実に戻ってきた。
「は!?暇そうって、ええ?」
「ぼんやりしてるオメーが悪い。あと一人は…山田な」
「ええ!?私?」
ちなみに山田さんとは、剣道部の女子マネージャーである。井熊が「山田って可愛いよな〜」と鼻の下を伸ばすほどの人、みたいだ。僕にはよく分からないけど。
周りはヒューヒューと囃し立て、かなり居心地が悪い。高尾に助けを求めるように視線を向ければ、ふいっと逸らされてしまった。あれ?
「じゃ、田中と山田、よろしくな!バトンタッチで」
ホームルーム委員の奴と入れ替わり壇上に上がる。なかなか緊張するな。
「えーっと、文化祭で何かしたい人は挙手して」「あたしは黒板に書いていくね」
意外と山田さんは適応力が高い。とりあえずみんなにやりたいことを上げさせて、実行可能で予算があまりかからないものを選ぼう。
(29/52)