!とある幼なじみのぐだぐだ日誌
「す、すまん。大丈夫か?」
「う、大丈夫……」
ぱちりと目を開けたら、メガネが少しずれた緑間の顔が視界いっぱいに映った。うわ、下まつげなっが!
「下まつげ長いな」
「……お前は上まつげが長いな」
「あ、ありがと。じゃなくて早く退け!」
「あ、ああ…。しかし…高尾に見られたらあらぬ疑いをかけられるところだった」
「緑間?何か言った?」
聞き取れなかったから聞いてみると、緑間は慌てた様子で「なんでもないのだよ!」と返答してきた。
「ならいいけど…。あ、緑間、時間大丈夫?」
「今は休憩なのだよ。少しは大丈夫だ」
「日誌の反省文、一緒に考えてくれない?」
そう頼めば緑間はむっと眉間に皺を寄せた。やっぱりその反応か。仕方ない、一肌脱ぐか!
「……僕を押し倒したこと、全校生徒に言うけど」
「は?あれは事故で、」
「ちょっと口がかすったことも?」
もちろん嘘だけど。緑間の顔がどんどん青くなっていく。髪の色と絶妙にマッチしてるな。
「やればいいんだろう!?やれば!!」
「わあ、さっすが緑間君!分かっているなあ」
「何故俺がこんなことを…!」
ラッキーアイテムを持ってないからじゃないかな、緑間。必死にガリガリ書く緑間の横で僕はぼんやりしていた。
「終わったのだよ……。もう休憩時間が終わるから帰る」
「ん、お疲れー」
「……本当に口がかすったのか?」
「え?本当、っ!?」
何が起きたのかわからなかった。目の前が緑一色になって、唇に柔らかい感触が当たって、緑間の匂いがした。
「ふん、やはりな。当たってないのだよ」
「……み、どりま…お前……!」
おそらく真っ赤になっているだろう僕を置いて、緑間は練習に戻っていった。夢じゃない、口に緑間の感触が残っているのが、現実だと告げていた。
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