幼なじみ | ナノ

!苦悩

「なにニヤニヤしてんだよ高尾」

「うお、宮地サン!いやあ、ちょっと嬉しいことがあって〜話していいっスか!!」

「絶対うぜえから話すな近寄るな、シッシッ!」


休憩中、さっきの出来事を思い出し、頬が緩んでいたようだ。照れ隠しにへらへらと宮地さんに詰め寄ったら、避けられてしまった。悲しい。

そういや、アイツが俺を名字呼びにしたのっていつだったかな。うーん、思い出せない。

あ、栄司だ。俺に気づいたのか、左手をひらひら。俺もお返しにひらひら。


(が、ん、ば、れ)と口パクで伝えれば、(泣、く、な、よ)と意地悪そうな笑顔を見せる栄司。


「……宮地さん」

「なんだよ」

「早く部活終わりませんかね」

「おーい大坪ー!!高尾がもっと部活したいってよ!!」

「ちょっ、反対ですってば!!」


アイツの顔を見て、更に帰りが待ち遠しくなった。


【おはよ、高尾】

【おはよー、栄司。……あれ、名字で呼んだ?】

【うん。そうだけど】

【なんで?】

【それは――】


「なんで栄司は俺を名字呼びにしたんだっけ」


ぽつりそう言えば、前を歩いていた栄司が振り返った。顔には【何を今更】と書いてある。めんどくさがってんじゃねえよ。


「あー、僕が高尾呼びにした理由?」

「そうそれ」


いや、もう思い出したけど。栄司は思い出したのか、顔を真っ赤にさせながら言った。

「……確か【呼びやすいから】じゃなかった?」

「あーそうかも」


にやにや笑えば「思い出したんだったら聞くな馬鹿!」と叩かれた。


【それは……高尾が僕と友達だからといって、虐められるから…】

【そんで友達ってバレるのが嫌なわけ?】

【……だって、和成が虐められるの、嫌だ】


顔を真っ赤にさせながら、つんと言った栄司は、小さくて可愛かった。

あの時と、同じ。でも、時は流れていて、俺と栄司はでっかくなったし、絆が深まった。


「ま、俺が困った時は助けてね」

「おーせのままに」

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