!とある
「高尾が口をきいてくれない」
「だからと言って、俺の休み時間を潰すのは迷惑なのだよ」
「……それは、悪いけど…。でも1週間も話してくれないし、解決策が見つからないんだ!」
「そんなの知るか!!」
どんよりとした天気。テーピングがなかなか言うことを聞いてくれない。そんな嫌なことがある時、厄介事は更に舞い込む。
田中が昼休み、図書室に転がりこんで来た。椅子に座っている俺の横に座る田中。なんでも高尾が会話をしてくれないだとか。
俺としては、さっさと何事もなく、仲直りすれば御の字なのだが。そう簡単にいかないのが現実だ。ふざけるな。
「速やかに謝ってこい」
「僕は何も悪いこと……してない、はず」
「……はあ。一体何があったのだよ」
「実は――」
誠凛との試合後、田中は高尾の家を訪れたらしい。そこで高尾の気に障ったのか、田中に八つ当たりをした。
すると、発作を起こしてしまった田中。おそらくその罪悪感で、高尾なりに距離を取っているのだろう。
「高尾はアホなのだよ」
「は…?緑間?」
「大体、アイツは過敏すぎる。そして一人で背負いこみがちなのだよ。だから、田中が高尾の荷物を持ってやれ」
窓に目を遣れば、黒い雲はますます広がっていく。こいつらは、こうならないで欲しい。面倒だからだ。
そう言えば田中は「何となく分かった」と曖昧に頷いた。コイツ、本当に分かったのか?
「へへ、真ちゃんって意外と高尾のことよく見ているね」
「見てないのだよ!そして高尾の真似をするな!」
田中の見せた笑顔が、意外にも可愛かったなど思っていない。
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