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どうしてこんなことになったんだ。右も左も見たことがない景色が広がっている。まあ、つまり、迷った。
高尾のお母さんに「栄司君、試合観に行くんでしょ?ならお願いね!あの子忘れ物しちゃって〜」と高尾のタオルを渡された。
面倒くさいけど、高尾に渡さなきゃ気持ちが悪いしなあ、と思い控え室を探していたら迷ってしまった。
「あー…もう広すぎだろ」
「あの……」
「うわぁあ?!」
「……なんか、すいません」
何だこの異常に影が薄そうな少年は!よく見ると誠凜のジャージを着ていた。なるほど、こいつが例の彼ね。
「いや、こっちこそごめん。もしかして、黒子君?」
「はい…そうですけど。どうしてボクの名前を?」
「緑間と高尾から聞いた。ちなみに俺は田中栄司、よろしく」
「よろしくお願いします。それで……田中君はここで何を?」
黒子の疑問に答えるのは少々、いや結構恥ずかしかったが、素直に迷ったことを伝えた。すると黒子は親切にも場所を教えてくれた。
「大丈夫そうですか?」
「……大丈夫、かも」
「……ボクもついて行きます」
「えっ、黒子君は大丈夫なの?」
「時間は大丈夫です。多分、カントクが怒って大丈夫じゃなくなると思います」
「いやそれヤバくね!?早く行こう!」
秀徳高校控え室前。無事、到着!いやあ、黒子君のおかげさまだな。黒子君をヘトヘトにしちゃったけど。
「黒子君ごめんね!でも本当ありがとう!」
「いえ、別に構いません。それより渡しに行った方がいいんじゃないですか?」
「あ、そうだった」
「じゃ、ボクはこれで」
「黒子君」
「はい」
「絶対に勝ってね」
「……もちろんです。田中君」
僕達は握手をした。また、会えるといいね。
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