!観戦後
結果から言うと、秀徳が負けた。その様子をじっと僕は観ていた。秀徳みんなの肩が少し沈んでいた。
緑間も高尾も平然とした態度だったけど、考えていることは同じだろう。
あいつらは強いって。
僕はその姿をじっと目に焼き付けた。
―――――――
夜、高尾ん家にお邪魔した。もちろん、高尾を労い、ざまあと言うためさ!高尾はベッドの上で、ぐてーと横になっていた。
「お疲れさま」
「あ、栄司!試合観てた?」
「観てた、観てた。んだよお前、黒子に勝つって言ったくせに」
そう揶揄すると高尾は「……そうだな」とらしくない苦笑いを浮かべた。その行動に僕は眉をひそめた。
「なんか悪いもんでも食べた?」
「食べてねえよ!」
「ふーん。なんか高尾っぽくない」
僕は近くにある本棚に寄りかかる。さすがに男二人で寝っ転がるのは、体格的なものと精神的なものでキツいだろう。
「……俺らしいってなんだよ。栄司は、俺のこと何でも知ってんのかよ」
珍しく高尾が苛立っている。中学のあの時以来で、幼なじみの僕でさえ、あまり見たことがないレアな表情だ。
いつの間にか起きた高尾が、僕の肩を掴み壁に押さえつけた。高尾の目が僕を射る。
逃げられない。目の前に居るのが、高尾じゃなくなる。こわい。嫌な記憶がフラッシュバックする。
「たか、お」
「俺の気持ちとか、知らねえくせに!」
「はっ…っ、高尾………ごめん、ごめんね」
息ができない。いつからか、過度の緊張かストレスで、発作が起きるようになった。
目の前がチカチカ白黒に点滅して、高尾が必死に僕の名前を呼んでいる。
「死ぬな!!栄司!!」
なんで高尾が、こんなに泣いているんだろう。僕は目尻に浮かぶ涙さえ、拭うことも叶わないまま、高尾の姿が消えた。
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