!とある目撃者の昼休み
歯磨きをして廊下で喋ってたら、栄司が「あ、」と口を開いた。なんか用事があるのかなと顔を見ると彼はこう告げた。
「呼び出しされたの思い出したからちょっと行ってくる」
「あ、行ってらっしゃーい」
栄司が歩いて行くのを見届け、教室に居る真ちゃんに声をかける。
「なんなのだよ、一体」
「何ってお楽しみだよ、お楽しみ」
「は?」
理解できないといった顔の真ちゃんを連れて中庭に行く。まあまあ、今から分かるって。
「えっと、用事って何?」
「あいつは…田中か?」
「正解。あ、真ちゃん静かにしててね」
「……趣味が悪いな」
分かってるって。そんなの自分でも思うくらいだから。
「好きです!付き合ってください!」
「あ…ごめん」
中学の時もそうだった。栄司は申し訳なさそうに断るんだ。そうすると、女の子は大抵「ごめんね」と言いながら去っていく。
ちょうど、今みたいに。
「で、そこにいるお二人さんは何の用ですかー?」
「げ」
「……濡れ衣なのだよ」
「もしかして僕に告白しに来た?おすすめしないぜ」
けらけら笑いながらこちらへ近づいてくる。真ちゃんにちらりと目配せして、小声で「逃げよう」と伝える。
「田中、高尾なら捕まえたのだよ」
「ちょっ、真ちゃん!?えっちょっと弁解させ」
「うっせ!よし、緑間君そのままな」
「了解した」
「すんな!!」
この後、俺は栄司に絞られましたとさ。おしまい。
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