さばの缶詰 | ナノ




翌日、わたしはまだ日が高くない内に会っておこうと思い、土曜日だけど珍しく早起きした。うん、偉い。


時間は朝の8時だけど、汗ばむくらいの気温。暑い、死にそう。普段から外に出ないもやしっこは炒められるわ、この気温と日差しに。


「イワトビのおじさん!ひ…久しぶり」


「ええっと、誰だっけな?」


「……わたし、塩井透だよ」


「…………ああ!透ちゃんか!大きくなったなあ」


おじさんはがはははと大きく口を開いて笑った。あ、猫がいる。クッションに座ってお澄まし顔か、可愛い。


「おじさん、この猫って名前あるの?」


「あるよ。ルルっつうんだ。可愛いだろ?」


ルルちゃんがにゃあんと鳴いた。可愛いなあ。自然に頬が緩んでしまう。ルルちゃんの可愛さに、ついよしよしと頭を撫でてしまった。


忘れてた、バイトの件を言わなきゃ。わたしはおじさんに本題を切り出した。


「おじさん、ここでバイトさせてください!」


「いいよ!」


「えっ…ほ、ほんとですか!?」


「おう、当たり前よ!昔馴染みのある透ちゃんなら、任せられるしな。まだ魚の名前、覚えてるだろ?」


「すこし、なら…」


小学生の頃、鯖の生態を知りたくて魚の図鑑を読んでいたら、他の魚の名前まで覚えてしまった。それで、葉月と松岡から「魚のファーブル」って呼ばれた。


「俺も年だからよ…透ちゃんが来てくれて本当助かるわ!」


「いえ…微力ながらも頑張ります!」


「がはは!透ちゃんはやっぱ真面目だな!」


そんなこんなで、わたしは鮮魚『イワトビ』のアルバイターになった。しかも今日から。一緒に頑張ろうねという意味を籠めて、ルルちゃんを撫でた。可愛いなあ。





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