さばの缶詰 | ナノ




「どうも」


「こ、こんにちはー。いらっしゃいませ」


日曜日である今日も、わたしはバイトに励む。ルルくんにご飯をあげたり、接客をしたり。意外と楽しいな、この仕事。

そんなルンルンな昼下がり、七瀬が買い物に来た。昨日、鯖を二匹買っていったのに、もう食べちゃったの…?ちょっと吃りながら思っていた。


「好きな魚、ありますか?」


「えっ!?好きな魚…?」


復唱すると七瀬は小さく頷いた。えー好きな魚…。適当に答えちゃえ!投げやりな感じだけど、これが最善策だと思いました。


「えーっと、鯖です!」


「鯖、ですか」


えっ、なんで鯖って言っちゃったのわたし!そして食いつきがいいな七瀬!こんなに目を輝かせるのは、水以外に無いと思う。


「あ、あなたも好きなんですか…?」


「好きな人も…鯖が好きだったから」


今はわかりませんが、と七瀬は小さく呟いた。へえ、単に水気があるからっていう理由以外にもあったんだ。…………好きな人って誰だろう、気になる。

もんもんと考えていたら、七瀬が「二匹ください」と鯖を指差して言った。ああ、分かったぞ。好きな人と一緒に食べるから二匹なんだ!


「好きなひと…喜んでくれると、いいですね」


「っ……!」


何気なく言った言葉に、七瀬は先ほどの鯖発言と同じように反応した。何か言いたげに口を開いたが、視線を落として言わなかった。

変なこと、言っちゃったかな。ちょっと内心焦りながら「すみません、変なこと言っちゃって」と謝っておいた。

なんで……七瀬は、そんなに寂しそうに目を揺らすの。





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