さばの缶詰 | ナノ
松岡はわたしん家の夕飯をちゃっかりと食べて、そろそろ帰ると言った。うんうん帰りなさい。わたしが落ち着かないから。
途中まで送ろうかと提案したら、玄関まででいいと断られた。一応女だから。こういうところで、女の子扱いされても恥ずかしい。……嬉しいけど。
「そういえば、お前って岩鳶?」
「違うよ。岩鳶狙ってたけど、入れなかった」
「……お前、どんだけ勉強してねえんだよ」
腐り落ちるぞと頭をがしがし撫でられた。それだけで脳細胞が一万匹くらい死んでるからやめて。
松岡はため息を吐いて、「岩鳶だったら……」と何か言いかけた。
「岩鳶だったら何?」
「なんでもねーよ。じゃあな」
「えっ、あ…… またね」
松岡凛という名の嵐が過ぎ去った。今日はバイトで七瀬達に遭遇して、元彼に絡まれていたところを松岡に助けられ……濃い1日だったなあ。
「透ー、茶碗洗ってちょうだーい」
「はいはい」
「はいは一回。それにしても、凛ちゃんはおっきくなってたわねえ」
「そーだねー」
昔の可愛さが抜けてたけどね。あんなつんけんしてなくて、もっと人当たりがいい感じだったけどなあ。
人って変わるものだね。私も含めて。スポンジで皿を洗いながら、そんなことを考えていた。
「凛ちゃんだったら、透を引き取ってくれるかしら」
「はあ!?な、に言ってんの!?」
「だって、あんないい子いないわよ〜なかなか」
まあ、母さんの前のみだけどね。苦笑しながら、「凛ちゃんの彼女は今んとこ水泳だから」と母さんに言っておいた。
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