長くて分からない
今日は水泳部の練習を見学しに来た。うはー楽しそうに泳いでんなあ、あいつら。俺も泳ぎたい。
ウズウズしながら見ていると、眼鏡をかけた奴が話しかけてきた。お、なんか理系っぽい。
「あの、貴方が鯨木柚子先輩ですか…?」
「うん、そーだけど。あ、ビート板使う?」
「そ、それはいりません!あの…貴方は何故、ここにいらっしゃるのかが気になって」
「えーと、暇つぶし?真琴を待つまでの!」
笑顔でそう答えてやったら、眼鏡野郎はピシャーンと何かに打たれたかのように固まった。おーい、大丈夫か?
「ば、バカですか貴方は!!ぼんやりしていないで、さっさと着替えてください!」
「は、はあ!?うお、ちょっと、助けてー!助けてまこっちゃーん!!」
「ええっ…?って、怜!?ど、うしたの…?」
「橘先輩、僕の理論上放課後の時間は三時間ほどあります。しかしながら!彼はその貴重な時間をぼんやり橘先輩を待つことで潰しているのです!橘先輩を待つにしても、もっと能率的で効果が期待できる事がありますよ!!」
……う、ん。眠たくなる話だったな。うーんと伸びをすると、「僕の話、聞いてましたか!?」と肩を掴まれた。
「あのな、長くてわからなかった!」
「………………えっ」
「怜、柚子に常識を求めたら負けだ」
「なんだよハルちゃーん、それなんか俺が常識はずれみたいな感じじゃねーか」
「頭のネジも外れてるけどな」
「んだとてめえ!!」
制服のまんまだったけど、構わず遙のところに飛び込んだ。マジムカつく!!今日こそは捕まえてやるイルカ野郎……!
(あの…あの人、制服なのにとてつもなく速いですね)
(ねーほんと柚子ちゃん入ればいいのに)
(あと……鯨木先輩ってどうして女性なのに、男装してるのでしょうか)
(……あはははははっ!!)
(な、何が可笑しいんですか!!)