変身5
大会の試練は数を重ねるごとにどんどんハードになる。最終戦で、俺達のペアと渚達のペア、そして知らない人達…3ペア残った。
ちなみに愛達のペアは準決勝で落ちた。内容は弁当作りだったけど、愛が失敗しちゃったのだ。
そして最終戦は、フリーだった。とにかくラブラブな様子を見せろ、ということらしい。
「ど、どうしよう柚子!」
「えーっとえーっと…む、無理だ!柚子にも分からない!あんまり恋愛ドラマとか見ねーからなあ」
「あ、渚達だ!」
舞台袖でじっと渚達の行動を見つめる。するとおもむろに、渚は立ち止まった。
振り返る怜に向かって、渚は「ねえ怜ちゃん」と呼び掛けた。
「な、なんですか渚、ちゃん」
「僕の好きなところ、教えてよ」
「…………え?好きなところ、ですか…?」
「うん。教えて?」
怜に指を絡ませながら上目遣いをする渚は、どっからどう見ても女子だ。しかも僕っ子、かなり難易度が高いなー。
アドリブに弱い怜は焦りを隠すように、メガネをいつもの仕草で押し上げた。
「僕は…渚、ちゃんのおかげで水泳が好きになりました。積極的で明るくて、そんな渚ちゃんのすべてが好きですよ」
聞いてて恥ずかしくなるようなセリフをさらりと言った。隣の真琴は顔を真っ赤にして震えている。
……うーん、どうすっかなあ。
「怜ちゃん……!僕も、怜ちゃんの論理的でダメダメなところがだーいすきだよ!」
「あ、ありがとうございます…?」
「えへへへ」
渚が怜に抱きついたところでタイムアップ。次は俺達、か。
「行こう、真琴」
「う、ん」
ヤバイな、真琴がガチガチに緊張してる。それもそうか、いつも隣に居る遙は居ねえし、ラブラブなところを見せなきゃいけねえし。
真琴、と小さく呼んで屈んでもらって、頭をなでなで。緊張が和らいだのか、ぴりぴりした雰囲気が無くなった。
「柚子、頑張ろう」
「おう、じゃなくて……うんっ!」