変身
「こうなった理由を教えてくれ、簡潔にな」
「部費がないから!」
「なるほど!わかりやすいぞ渚!!じゃねえわバカ!!!!」
「どうしてー?とっても似合ってるよ、ゆずこ“ちゃん”?」
用事があるから水泳部の部室に来てほしい。そう渚に言われて部室である更衣室に来たら、いきなり真琴に捕まえられた。
あれよあれよという間に、俺は黒髪でショートボブをかぶせられ、花柄の可愛らしいワンピースを着せられていた。
……つまり、強制的に女装させられた!!
「ごめん柚子…実は、今度ある岩鳶町のベストカップルを決める大会で、賞金5万円がもらえるんだ」
「ご、5万!?」
「そこでちっちゃい僕とゆずこちゃんが選ばれたんだよ!」
「はあ…?ていうか俺は部員じゃねぇから!科学部なんだよ!」
「どうせ幽霊部員じゃないですか」
うぐ、怜に鋭いところを突かれて何も言い返せない。でも女装だなんて恥ずかしいし、似合わねえし…。
すると、真琴が俺の手を握って口を開いた。
「柚子は女の子姿も似合ってるな」
「ね!身長も女子と同じくらいだし、ごつごつしてないし。ぴったりだよ!」
「で、も…渚は恥ずかしくねえのかよ」
「僕はこういうの慣れっこだからねー。それにみんなと泳ぐためなら、どんな手も惜しまないよ?」
なんだかんだで……ちゃんと考えているんだな。ちらりと遙を見たら、無言で「出ろ」という視線を送ってきた。
「……取ってやろうぜ、ベストカップル賞!」
つづく