くちくちくちきちく!
俺が初めて柚子と出会ったのは、何気ない日常の中でだった。入学して、知り合いがハルしかいない状態が少し心細かった。そんな頃に、柚子と会ったんだ。
「っ!!おま、お前は……!」
「真琴……知り合いか?」
「いや、全然知らないし…」
「お前が…巨人かっ……!」
「「は…?」」
初めて会った時の柚子は今より身長が小さかった。160もなかったんじゃないかな?そんな彼は、俺を見てぶるぶると身体を震わせた。
「くっ、駆逐しなければ!!」
「えっ…?駆逐って何事!?ええええ!?な、たっ、助けて遙……!」
「嫌だ」
「えええええ……!」
「仲間に助けを求めんな巨人め!あっ、逃げんなてめー!」
「逃げんなって、追っかけてくるなよ!!」
校内を一周して体育館の裏に来た。荒くなった息を整えて、追いかけてきた奴を迎え撃つ……!あれ……いつの間にか、俺は少し柚子に影響されていたようだ。
「ちぃ……どこ行ったんだ、あの巨じ、っ!?」
「捕まえた!はあ、もういきなり追いかけてきてさ……一体、」「熱くない!?お前、巨人じゃないのか!?」
「……ごめん、巨人って何?」
さっきから柚子が口にしていた「巨人」。それって俺が大きいから言っていたのかと思っていたら、全然違った。漫画の話だった。
「へえ、漫画かぁ」
「ごめんな、迷惑かけて。あと……そろそろ離してくんねえか?は、恥ずかしいし」
「あっ、ごめん。ちょうどいいサイズだったから」
つい口を滑らせてしまった。多分彼は身長をコンプレックスに思っているんだろう。
気付いたときには遅く、柚子が顔を真っ赤にして「やっぱりお前は巨人だー!!」と飛びかかってきた。
ごめん、俺は巨人じゃないから。
(これが仲良くなったきっかけ)
(へえーマコちゃん、この頃からゆずこちゃんを弄んでいたんだ!)
(弄んでいないから!むしろこっちが翻弄されてるから!!)