猫と戯れよ
今日は真琴と一緒に猫カフェに来た。市内に出なきゃ無いから、めちゃくちゃ疲れた。でも、コイツの緩みきった顔を見たら、まあいいかなって思ってしまう。
猫より癒されるわ、真琴は。
「うわあ……!見て柚子!アメショーだよ!こっちはチンチラ!」
「おー短足だな。可愛い可愛い」
「……もしかして、無理させちゃった?」
「あ?そんなことねえよ。猫にでれでれな真琴が可愛いなって」
俺がさらっと言った本音に、真琴は眉を八の字にした。なんだ、不服かよ。
「男に可愛いは違うと思うけど…」
「そうかー?俺にはそう見えるけど」
「……一応ありがとう?」
「どういたしまして?」
奇妙なやり取りに笑いが零れる。三毛猫が俺の手に擦り寄ってきたから喉元をくすぐってやる。
案外猫もいいかもな。俺は今まで犬派だったけど。そんなことを考えていると、真琴がぼんやり俺の手元を見つめていた。
「真琴?」
「っ!や、あの……何でもない」
「……そうか」
いやーそれにしても猫は意外と可愛い。帰りの電車を降りて、見慣れた海岸沿いの道を二人で歩く。
「あの、さ。さっき言いかけてたこと、言っていい?」
「言いかけてた?」
「柚子が三毛猫を触ってた時のことだよ。あれ見てて……なんか羨ましいなって」
「……真琴、ちょっと屈んでみ」
「え?ああ、こう?」
いつもは高くて見上げるのに苦労する真琴の顔が間近だ。ちょっと、恥ずかしいな。
意を決して、あの三毛猫にやった様に真琴の逞しい喉仏を触る。ひくりと動くのが面白くて笑ってしまった。
「な、にこれ……!」
「猫は喉元を撫でると機嫌が良くなるって言うし、真琴もそうだと思ったから」
「…めちゃくちゃ恥ずかしいから……あ、ありがと」
夕陽に照らされた真琴の顔は、恥ずかしさで真っ赤になっていた。
(たまに柚子って無自覚だよな)
(それは渚だろ)
(あーちょっと分かるかも)
(くしゅんっ!誰だろ…僕の噂してるの)