拝啓弟様へ
もうすぐテツ君の誕生日なのに、渡すプレゼントが何も思いつかない。しょうがないので本人に聞いてみた。
「欲しいものですか?」
「うん。何かない?」
「特に……。あ、今度の日曜日、空いてますか?」
「空いてるけど……」
「じゃあ映画を観に行きましょう」
そういう事の運びで私たち姉弟は映画館に来た。なんと観るのはゾンビがうじゃうじゃ出てくるホラー映画だった!
「……これ、観るの?」
「はい、ずっと前から観たくて。もしかして姉さんはホラー嫌いですか?」
挑発的な視線で弟に見られたらそりゃ観るしかないでしょ。嫌いじゃないよと否定して、背中に冷や汗をかきながらチケットを平然とした様子で買った。
『キャァアアアアアアア!!!』
「っ!うわ、えっ」
「…………」
テツ君は終始無言だったけど、私はずっとびくびくしながら観ていた。終わった後は半泣きだった。
エンドロールが流れているけど、あの暗闇からいつ出てくるかはらはらしている。
「姉さんの目、赤くなっていますよ」
「ち、がうし…こわ、怖く、ない…!」
何故かテツ君は座ったまま動かない。マジで怖いから早く帰ろうよ!視線で訴えるのに全然気づかない。
「ねえ、早く出よう?こ、怖くないけど、ほら」
「はあ……誤魔化すならもっと上手くしてください」
不意にテツ君がこちらを向いて顔を近づけた。え?ちょっと私たち姉弟だし血は繋がってるのよ?き、禁断のなんちゃら!?え、キス!?
ギュッと目をつぶったら目に感触が。ハンカチだ。目を開けたらテツ君が呆れた顔をして涙を拭いてくれていた。
「怖いなら…無理しないでください。姉さんは頑固者です」
「だ、だって……」
「ああ、さっき目を閉じていましたけど、何を期待したんですか?」
一気に熱が顔に集まるのを感じた。これは恥ずかしい!恥ずかしくて死ぬレベルだ!
「期待なんかしてない!テツ君の馬鹿!ドS!イケメン!」
「貶しているんですか?褒めているんですか?」
ふふっと不敵な笑みを口元に浮かべるテツ君は、なんか敵わないなと思いました。
「お誕生、おめでと」
「っ!……ありがとう、ございます」
不意打ちで頬にちゅーすれば不服そうな表情になった。うん、これがデフォだよね。 Happy Birthday Kuroko!!
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