すべてはここにかえる 

夢の中で、赤司に殺されかけた。刃物を持っていて、斬りかかってくる彼を間一髪でかわした。

その後、俺はしゃがみこむ赤司の背中の汗を舐めるという夢を見た。

夢の内容をぐったりしている玩具に言った。特に反応がなかったから、何となく聞いてみた。

「ね、赤司は俺のこと好き?」

「好きだ……」

「そっか、俺は嫌いだ」

「っ、それならば…もう、帰ってくれないか」

赤司は綺麗な顔をひどく歪めて、弱々しい声で言った。俺は思わず笑ってしまった。いつも堂々としている彼が、鬣(たてがみ)を切られたライオンのように自信を喪失しているのが可笑しくて可笑しくて、いとおしい。

そんな様子の俺を見た赤司はぎろりと睨む。ああ、そんな傷だらけの顔で睨んでも誘っているようにしか見えないよ。

「可愛いね、赤司。俺、泣いてる時とか、傷ついている時とかの赤司が好きだからさ」

「ッ……最低、だな」

「褒めても手しか出ないよ」

「帰ってくれ……」

ぐすぐす泣き出した赤司を、ぎゅっと折れてしまうくらい抱き締めた。そのまま、彼に優しく口付けた。

口の横が切れてて痛いだろうと傷を舌で舐めると、彼の肩が面白いくらい跳ね上がった。

「やだっ、や、ん……はぁ、京介…っ!」

「赤司、好きだよ。あいしてる」

「もう、やめてくれ…嘘を吐くのは。嫌いなんだろ、僕のこと」

「嘘つきなのは赤司じゃないか。帰れって言うくせに、シャツは離さないんだ」

さっきからずっと思っていたことがぽろっと口から出てしまった。無意識のうちに握っていたのか、赤司は耳を赤くして慌てて離した。

「…ベッドに行こうか」

そう言えば、赤司は顔を真っ青にして震え出した。この前みたいに手酷くしないつもりだったんだけど、これを見たら、ねえ?

「やだ、やめろ…っ!」

可愛い可愛い、俺の想い人。これからも、ずっと愛を注いであげるね。


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